「ビニールの城」

4月16日

上演決定&メインキャスト発表

蜷川幸雄(演出・シアターコクーン芸術監督)コメント

ぼくは唐さんの戯曲にさらわれた人間です。この「ビニールの城」も、豊かな詩的言語や時空を自在に超えるドラマツルギーに溢れている。

そして、ぼくにとっての唐さんの戯曲の凄さ、下々の人間たちの寂しく美しい姿も。

久々に一緒に仕事ができる森田くん、充実期を迎えますます輝くりえさん、その存在に注目をしていた荒川さんたち、才能豊かな俳優たちと共に、観客を遠くに連れ去りたいと思います。

森田剛朝顔)コメント

今回の舞台出演が決まり、また蜷川さんとご一緒にお仕事ができることをとても幸せに感じています。蜷川さん演出のもと、素晴らしいキャストの皆さんと一緒に、この「ビニールの城」という舞台に全力で挑みたいと思います。

natalie.mu

5月12日

蜷川さん逝去

 

5月13日

追悼コメント発表

「血は立ったまま眠っている」で、初めて御一緒させてもらった時、「やっと会えたね」と、優しく握手してくれました。舞台の初日前には、「他の人に何を言われても、俺が責任を取ってやる」と言ってくれました。だから舞台に立つ事が怖くなかったですし、この人の為にやりたいと思いました。「馬鹿野郎、変態」と言われながら、たくさんの愛情をいただきました。もう一回会いたかった。謹んでお悔やみを申し上げます。

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5月27日

あさイチ」生出演中、蜷川さんとの共演映像に涙。「実感が湧かないですね。まだ稽古場行ったら会える気がするし……」*1。番組の中でポスター初披露。

 

5月27日
演出を金守珍さんが手がけることが決定。「芸術監督 蜷川幸雄・追悼公演」として上演されることに。

natalie.mu

 

8月6日〜29日
本番

natalie.mu

千秋楽はカーテンコール7回。観た方々によると、ラストシーンで夕顔の肩に顔を埋めて泣いていたとのこと。7回目のカーテンコールは1人で、生声で「ありがとうございました」とお辞儀して涙を拭った。

 

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「ヒメアノ~ル」の番宣の頃、剛くんの頭の中は本当は、撮り終わった作品のことではなく目下この舞台に向いているんだろうなと思っていました。バラエティ露出では、慣れない場でちびちびと、でも的確に、“らしさ”を出して振舞っていたように感じますが、「あさイチ」での涙は森田剛の人間性がドバァーッと溢れ出てしまったシーンでした。あんなに優しい井ノ原くんが「僕の町レベルの普通の優しさとは全然違う、宇宙レベルの優しさを持っている」と言っただけある、ものすごく人間味のある情深い人だと思います、剛くんは。それなのに同時に、どこにいても居心地悪そうな孤独感と不良感を醸し出してる。蜷川さんの言葉を借りれば「野ネズミのような」。それでいてジャニーズ。赤い衣装着てセンターにいる。そりゃー稀有な役者でしょうって思う。

 

私は今回、幕が開いて2日目、真ん中の週、千秋楽前日に観劇しました。蜷川さん追悼公演というのもありチケットが全然取れなくて、当初FC分は全滅、V友リア友家族知り合い40人以上(!)の助けを借りてなんとか確保できました。この声届いてないと思うけど協力してくれてありがとう……!

 

初見の感想は「やーすごいものを観た……でも難しい話だったなあ」。剛くんが雑誌取材で「難しい」と言ってたのがよくわかった。あとで思うと台詞や演出を論理的に考えすぎていたのだと思います。その後2回目、3回目と観るたびこの作品を楽しめるようになっていき、なんと濃密な夢の世界だろうと心酔していました。これが唐十郎ワールドってやつかー! そう、この作品は一言で言うに「唐十郎の夢の中の世界」の話なんですよね。金さんが稽古初日にそのように話して、荒川良々さんは「ああ、だったら僕らが何かを理解しようとしても到底追いつかない世界なんだろうな」と思ったそうで、観客の自分もただその世界に身を委ねることにしました。そうして不必要な邪推や秩序を取っ払ったら、水の中を浮遊する手錠のかけられた人形・昼顔が単純に視覚的に美しいとか、宮沢りえさんの声で聞くモモの台詞がすっごく綺麗、って思うだけで泣けたりして、新しい芸術の愉しみ方を学びましたこの度。

 

蜷川さんの追悼公演という点においては、蜷川さんの姿形にわかりやすく似せた人物が、インタールード的に数カ所出てきました。名もない腹話術師っていう役どころなのかなあ、人形役のプリティ太田さんや野澤健さんを操りながら「なんてジメジメした陽気だろう」「なーんてジメジメした陽気だろう!」って台詞を反復させる、なんとも不可思議で抽象的なシーン。あれオリジナルではどうなってるのかな? 戯曲本を持ってる同僚に借りに行かないと。

 

それからパンフレットでの金さんの言葉がものすごく腑に落ちました。「蜷川さんの『ビニールの城』を体験できなかったのは残念ですが、蜷川さんはしっかり〈監修〉として存在しておられる。なぜなら蜷川さんのキャスティングが、すでに演出の半分以上を占めているから。完璧な素材が適材適所に配置されているから、あとは素材の魅力を活かすだけ」という。確かに今回の舞台の一番のミソこそ、森田剛宮沢りえ荒川良々唐十郎というネームの引き合わせであり、蜷川幸雄だからできたキャスティングだとも思います。蜷川さんが最後に人選をした作品で、実際に演者が力を発揮しているのを観ている、それだけでとても価値の高い2時間でした。

 

あと完全に私見ですが、今回、開演するかと思ったら3〜4分何も起こらない時間がありました。ピシャーンみたいな音が響いたから「お、始まる」と思って(今考えるとこれ水の跳ねる音かな)観客全員が舞台上を見つめてて、シーンと静まり返ったシアターコクーンに、風鈴の音色と風の吹くヒューッという効果音がちーさい音量でただ流れている……っていう時間。それで「…………。……?」と疑問に思う思わないかくらいのタイミングでカーン!と音が鳴って暗転するわけですが、私はこれ、蜷川さんへの黙祷を捧げる演出なのかもしれないと思いました。複数回入って、この冒頭の静寂が尺伸ばしではなく毎回行われているものだとわかり、金さんなりの演出なんじゃないかって思い始めたんです。現場で時間を計ってみたら3分から4分の間でした。「ビニールの城」の世界に誘う静寂の時間、1985年の浅草にタイムスリップする時間、会場の芸術監督への黙祷の時間、捉え方はなんでもいいんでしょうけど、私はこの静まり返った3分に精神を落ち着かせて蜷川さんを偲んでいました。

 

千秋楽、涙を流した剛くん。パンフのインタビューで「この稽古場で、僕自身はまず役を楽しむことが第一。公演が終わってから、蜷川さんへの思いと向き合うつもりです」と語っていたから、やっと、ですね、と言ってあげたい。5月からずっと、大変だったと思います。悲しんだり感謝したりする前に果たさなければいけない役割があって。未知の領域と言えるホンで、あのカンパニーの真ん中に立って、朝顔という役を全うするのは刺激的かつ難しい仕事だっただろうなと。本当におつかれさまでした。

 

ファンとしては、また新しいものを見せてくれて誇らしかった。全力が伝わってきてうれしかった。剛くんが泣くと1stコンの映像を思い出しちゃうな。泣きながら「今までみんなに支えられて、助けられてきたんで、今度はみんなにお返しする番だと思います。僕がみんなを幸せにします」ってやつ。21年経っても幸せにしてるよ!

*1:このとき、わりと止めどなく涙流してる剛くんに「泣」「涙」というワードに触れずに蜷川さんへの思いを聞き出して、自分の剛くん観も添える井ノ原くんがめちゃくちゃ素敵だった。